東京都の発表では、新規の感染者数や陽性者率の低下といった効果が出ている一方で、外出自粛の長期化による家庭内でのストレスの高まりや家庭内暴力、虐待リスクの上昇、子どもたちの生活リズムの乱れや教育格差なども指摘されています。
そのような中、無所属 東京みらいでは、外出自粛に伴う家族関係の変化や休校・休園における子どもたちの状況について、アンケートを実施しました。
アンケート結果もふまえ、以下の通り緊急要小池百合子東京都知事と藤田裕司東京都教育長あてに5月14日付で以下の緊急要望(第8弾)を行いました。
(第1弾は3月3日、第2弾は3月11日、第3弾は3月26日、第4弾は4月1日、第5弾は4月7日、第6弾は4月10日、第7弾は4月24日に提出)

 

みなさまから直接寄せられる切実な声、アンケート調査を通して得られた声などをもとに、引き続き建設的な提言を続けていくと共に、今月末開会予定の第2回定例会にのぞんでいきます。

 

東京都知事 小池百合子 様
東京都教育庁 藤田裕司 様

 

 

 

先般、緊急事態宣言の延長が決定し、都としても、外出自粛や休業の要請を5月末まで延長しました。東京都の発表では、新規の感染者数や陽性者率の低下といった効果が出ている一方で、倒産や廃業する企業や失業者は増加し、関連すると思われる自殺や犯罪等の最悪の事態も生じています。さらに、家庭内でのストレスの高まりや家庭内暴力、虐待リスクの上昇、子どもたちの生活リズムの乱れや教育格差なども指摘されています。

 

そのような中、無所属 東京みらいでは、外出自粛に伴う家族関係の変化や休校・休園における子どもたちの状況について、アンケートを実施しました。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に取り組むにあたっては、アンケートで明らかになった家庭内の状況変化等も踏まえた対応を求めるところです。
そこで、以下の通り、緊急要望いたしますので、関係各局がこれまで以上に緊密に連携し、適切かつ迅速な対応を図っていただきますようお願いします。

 

 

 

 

1.学校休校の長期化に伴う影響について(参考:休校中の子どもたちの状況に関するアンケート調査 https://tokyo-mirai.net/enquete/956/
休校中の学習やオンライン教育の推進にあたっては、自治体ごと、学校ごとの対応にちがいが生じています。都の総合教育会議においては、これからの教育のあり方を議論するとされていますが、対応のちがいや家庭環境等から生まれる格差をいかにして埋めていくのかという視点も忘れてはならないと考えます。そこで、以下の通り要望します。

 

【子どもの学びの保障について】
・生徒の生活状況や安全の確認、勉強や進路の相談等のため、電話等で教員から生徒へのコミュニケーションをより緊密にするよう区市町村へ働きかけること。

 

・オンライン教育を推進するにあたっては、タブレット端末やWi-Fiの貸与のみならず、健康や安全、つながりを確認するのための先生と生徒の「コミュニケーション」、教材配布や課題提供による「自宅学習」の実施、双方向の「オンライン授業」といった、その活用段階に応じた支援を講じること。その際、ICTパイロット校で得られた知見等をとりまとめ、早急に周知を行うこと。

 

・生活リズムを整えたり、友だちと顔を会わせたりするなどの授業以外の学校の機能を果たすため、都立学校において、オンライン朝礼・ホームルームを実施すること。また、区市町村立学校においても同様に取り組むことができるよう、その注意点やガイドラインなどを周知すること。

 

・地域ごと、学校ごと、教員ごとにオンライン教育への取組の差異が見られることから、その必要性や有効性について改めて学校長への周知を行うとともに、オンライン教育の導入を強く働きかけること。

 

・音楽・図画工作等の芸術科目については、海外や国内の美術館や博物館、コンサート等の無料開放作品や動画等を最大限に活用し、休校期間中も生徒の創造性や文化的素養を伸ばすことができるよう取り組むこと。

 

・東京都においては、図書館等にも休業要請が継続している中ではあるが、子どもたちの読書を通じた学びの継続を担保することは重要である。そこで、学校図書館や区市町村立図書館において、感染拡大防止対策を講じた上で、郵送や予約制で受け渡しのみに限定し、本の貸し出しを行う区市町村を支援すること。

 

・休校期間に生じた家庭の経済状況による教育格差を解消するため、一定の所得以下の家庭に対し、学習塾や習い事、体験学習や通信教育、教材の購入などに一定期間利用できる学習クーポンの発行や受験生チャレンジ支援貸付事業における対象学年の拡大などを検討すること。

 

・東京都教育委員会が制作する「おはようスクール」については、放送したものを動画配信するなど有効活用すること。

 

 

 

【子どもの心身の健康の維持について】
・給食の提供がないために適切な食事がとれない子どもたちの支援について、地域と連携し飲食店等で利用できるクーポンを配布するなどを区市町村が取り組めるよう早急に検討すること。

 

・運動機能や体力の低下を防ぐため、自宅で取り組むことができる体育や運動の動画等の情報提供を行うとともに、オンライン教育としても行うこと。

 

・区市町村立学校における校庭の開放について、利用時間や人数を区切るなど感染防止対策ガイドラインを策定するなどして、区市町村の取り組みがすすむよう支援すること。

 

・養護教諭、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーが電話またはオンラインで生徒または保護者からの生活相談等に対応できるようにすること。

 

・公園等での散歩や運動が安全に行うことができるよう、都として公共空間で運動等を行う上での感染防止対策についての考え方や住所や月齢・年齢ごとの分散利用の案を示すなどのガイドラインを示すこと。また、周辺住民等の無理解による幼児とその保護者に対する誹謗中傷等を防ぐため、区市町村から適切な周知や「適切な運動をしている」マークを作成するなどして働きかけること。

 

 

 

【学校再開を見据えて】
・学校再開に向けた、分散登校、時差登校などを進めるにあたっての感染防止対策や指針を区市町村に対し示すこと。その際、引き続き、登校を自粛する生徒が一定数存在することを念頭に、そのフォローアップやホームスクーリングにおける登校認定基準等についても、早急に検討を進めること。

 

・国では9月入学の議論がはじまりますが、保育や幼児教育、進学や就職、また各種大会や発表会等の日程など、学校に付随する様々な社会的影響について充分に検証し、子どもたちにとって最良の選択がなされるよう、国へ要望すること。

 

・東京都総合教育会議において、オンライン教育について議論する上では、単にICT環境を整備するのみならず、併行して、Society 5.0における学びのあり方を念頭に、ICTを活用する目的や生徒の学びを最大化する方法といった視点での検討を行うこと。

 

 

 

 

2.休園や登園自粛に伴う影響について
(参考:休園・登園自粛中の子どもたちの状況についてのアンケート調査https://jp.surveymonkey.com/results/SM-67VJX62N7/

 

・生活リズムを整え、簡単な運動や遊びを行うとともに、幼児の安全確認も行うことのできるオンライン保育を実施することができるように、保育施設や幼稚園への機器導入等を支援すること。

 

・幼児の運動不足解消や体力低下の防止のため、「とうきょう子育てスイッチ」での幼児向けの運動や体操に関する動画コンテンツを充実すること。

 

・保育所や幼稚園が再開した場合でも、保護者の状況等に応じて登園するか自粛するかを選択でき、自粛により不利益が生じないよう指針を策定すること。その際、保育施設や幼稚園が取り組む感染防止対策を支援すること。

 

 

 

3.外出自粛の長期化に伴う影響について
(参考:ステイホーム週間 家族関係実態調査 ※後日HPに掲載)

・外出自粛が長期化するにつれ、家庭内でのストレスレベルが上昇していることに鑑み、メンタルヘルスを保持するために有益な情報を提供すること。

 

・外出自粛の長期化により、これまでは行われていなかった家庭内暴力や児童虐待が起きるリスクが高まっていることに鑑み、家庭内暴力や児童虐待かという兆候を分かりやすく示し、相談先や対処方法について繰り返し周知すること。なお、配偶者暴力については、DV加害者が家庭にいる時間が長くなり、電話でのSOSを出すことが困難になっているとの指摘もあり、メールやSNS等を活用した相談受付を早急に実施すること。

 

・(再掲)児童相談所の児童福祉司による家庭訪問等の業務を強化すること。また、児童・生徒の暮らしの安全と心身の健康を確保するため、教員による電話等での声がけを継続し、適切な支援へつなげていくこと。

 

・相談窓口の開設にとどまらず、子育て世帯へのアウトリーチの強化を図るよう区市町村に働きかけること。

 

・家庭内の関係に良好な変化があった家庭においては、特に男性が家事や育児に積極的に参加している傾向がみられることから、男性の家事・育児参画について、より一層の啓発を行うこと。また、今後テレワークを推進するにあたっては、この良好な変化を定着させることができるよう取り組むこと。

 

 

 

4.新型コロナウイルスの影響が続く中での経済活動について
国では「新しい生活様式」が示されましたが、都民一人ひとりがその要素を暮らしに取り入れ、各業界が新型コロナウイルス感染症の影響がある中でも、それに適応した経済活動を行っていくことができるよう、業態転換等を支援していくべきです。そこで、以下の通り要望します。

 

・新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業の縮小を余儀なくされるなど業務量が低下している企業等において、兼業や副業、一時的な他の企業等での就労が進むよう取り組むこと。その際、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の周知を行うとともに、労災保険などの課題について、国の議論が加速するよう働きかけること。

 

・新型コロナウイルス感染症の影響で職を失う方が増えており、特に、障害者やひとり親、刑余者などの就労困難者は、その就労環境が大変厳しいものとなっている。そこで、昨年条例が策定された「ソーシャルファーム」について、就労困難者の雇用が促進されるよう取り組むこと。

 

・「ミドルチャレンジ事業」や「若者正社員チャレンジ事業」を活用し、新型コロナウイルス感染症の影響で職を失った方の雇用が促進されるよう取り組むこと。

 

・障害者就労においてもテレワークへの転換を進めるため、テレワークによる就労支援と共に、在宅やリモートで働く障害者への業務の発注促進や共同受注窓口の強化を進めること。その際、就労支援事業所等のいわゆる福祉的就労においても、在宅やリモートでの働き方が進むよう取り組むこと。

 

・公共交通機関での通勤や交通混雑を避ける一方、集中して仕事に取り組むことができる環境を整備することは重要であり、職住近接となるサテライトオフィスの整備を促進すること。

 

・(一部再掲)医療機関や障害者・高齢者福祉、保育施設をはじめ、感染リスクの不安もある中で、社会生活を維持するために働いている職員・従業員に対し、特別手当などが支給できるよう謝意を込めた給付金を検討すること。

 

・(再掲)感染拡大防止の観点から、非対面型サービスへ転換を図ろうとする事業者について、その業種を問わず、飲食事業者と同程度の支援を講じること。
例)-エンターテインメント産業の振興のため、民間配信プラットフォームと連携することや、文化芸術作品を映像・動画で有償配信する際の支援。
-学習塾におけるオンライン授業、スポーツジムにおけるオンラインフィットネスなどに必要な機材導入支援。

 

・(一部再掲)クラウドファンディングによって厳しい環境の事業者や個人を救済しようという動きが活発になってきている。既存の「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」については、新規サービスやソーシャルビジネスに加え、新型コロナウイルス感染症の影響による諸課題を解決するための取組も広く対象とすること。また、募集を早期に開始するとともに、より多くの方が活用できるよう広報を強化すること。

 

 

 

5.芸術文化活動の支援について

・愛知県では文化芸術活動の担い手を支援するため独自の応援金制度を創設した。感染拡大の影響で大幅減収した文化芸術活動の担い手に対して法人、個人それぞれに応援金制度を構築し、生命と生活の支援を行うこと。その際、芸術文化への支援を目的とした新たな寄附金の窓口を開設し、今後の芸術文化活動支援に活用すること。

 

・「アートにエールを!東京プロジェクト」について今後取り組みを継続させるとともに、ベニューとして撮影スタジオや文化施設・ライブハウス等を活用した場合に支援金の加算を行えるよう対象費用を拡大させること。さらに、使用する撮影機材等についても費用補助を行うこと。また、映像作品制作に困難を抱える文化芸術活動の担い手への支援や企画のみの公募の部門も設け、制作事業者等とのマッチングにより映像化できるよう支援すること。

 

・自粛期間に執行できていない予算について、例えば美術館や博物館におけるアート作品の追加購入、助成金の上乗せや採択数増加などに活用することで、文化事業者やアーティストへの支援へとつなげること。

 

 

 

6.官民協業について
新型コロナウイルス感染症を乗り越えるべく、様々な民間団体や企業が支援に乗り出しており、知事の記者会見でもあったように、都民のアイディアを活かしていくことは重要です。そこで、以下の通り要望します。

 

・(再掲)若年女性や特定妊婦、DV被害者等の居場所確保、宅配型や配布型で生活困窮家庭へアウトリーチを行う子ども食堂の運営、あるいは教育機会の格差解消に取り組むなど、行政の手が行き届かない支援を担っている民間支援団体等に対し、より一層の財政的支援を講じること。

 

・新型コロナウイルス感染症によって生じる様々な社会的課題の解決に向けては、民間事業者をはじめとする様々な主体の独自の取組や、行政と連携した取組が欠かせない。そこで、広くアイデアを募集し、施策に反映するにあたっては、民間事業者等の独自の取組を支援する仕組みを検討するほか、行政との連携によって課題を解決していくオープンイノベーションの促進を図ること。

 

・新型コロナウイルス感染症に関連する諸課題の解決に向けて活動している団体等に対し、寄付等を通じて、都民が社会課題解決に積極的に参画する機運を醸成すること。その際、東京ボランティア・市民活動センターの「ボラ市民ウェブ」で情報を集約し、より分かりやすく広報するなど、積極的に活用すること。

 

 

 

7.今後のロードマップについて
・今後のロードマップを描くにあたっては、緊急事態宣言下の終盤、宣言明け(ウィズコロナ)、収束後(アフターコロナ)の各段階において、都民が中長期的な視点での暮らしをイメージすることができるよう、ふさわしい行動や目指す社会像も併せて、分かりやすく示すこと。
例)

-飲食店におけるソーシャルディスタンスの確保に向けた工夫
-学校再開時の分散登校や毎朝の検温、保健室等における感染拡大防止策の徹底など

 

・今後の新型コロナウイルス感染症対策を進めるにあたっては、既存の事業の対象拡大や早期開始、広報強化などの工夫で課題解決に資することはないか、都庁職員が主体的に総点検をおこなうこと。

 

・PCR検査相談の目安が見直しされることで生じる検査需要に対応することに加え、限りある資源を活用して賢く検査が行えるよう、PCR検査の優先順位について、整理をすること。その際、「緊急事態宣言下」「経済活動や学校などの再開時」「第二波感染拡大期」それぞれに必要な検査体制のあり方を検討し、適切な検査実施に向けた設備投資や人員の配置のための準備を行うこと。以上

 

 

20200514_新型コロナウィルス対策緊急要望(第8弾)